【パリオリンピック】サーフィンの「プライオリティ」について徹底解説!
パリ2024オリンピック日本代表4選手(五十嵐カノア・稲葉玲王・コナーオレアリー・松田詩野)が順当にROUND1/ROUND2を勝ち上がり、盛り上がりを見せているサーフィン競技。東京2020オリンピックから正式種目になったサーフィンですが、観戦する上で理解しておきたいのが、サーフィン独自のルールの一つ「プライオリティ」。スコア表の横に「P」のマークがついているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。こちらの記事では、オリンピック観戦がもっと楽しくなるサーフィンのプライオリティルールについて徹底解説します!
プライオリティルールの目的
サーフィンは海で行うスポーツであり、自然相手なので刻一刻と波や風の状況は変化します。出場選手に平等に機会を与える競技の公平性と、選手同士の接触事故を防ぎ安全を確保するために、サーフィン競技におけるプライオリティは非常に重要なルールです。パリオリンピックでは試合時間30分の中で何回でも波に乗ることができ、そのうち点数の高い2本の合計で順位を争います。「じゃあたくさん乗った方がいいんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、サーフィンは、回数を重ねればいい得点が出るという確率論的なスポーツではありません。高得点が出やすいいわゆる「いい波」をじっくりと待ち、ここぞ!というタイミングで仕掛ける駆け引きと忍耐が重要なスポーツです。そのため、波の優先権を表すプライオリティはとても大事です。
プライオリティは「波に乗る優先権」
サーフィンにおけるプライオリティとは「優先的に波に乗れる選手」を意味します。プライオリティを保有している選手は自分の好きな場所とタイミングから好きな波を選んでテイクオフ(波に乗ること)ができます。例えばAさん、Bさん、Cさんの3名でヒート(サーフィンにおける対戦形式)を戦っていたとします。Aさんがプライオリティを持っていると、実際にテイクオフしなかったとしても、選んだ波に乗ろうとしてパドリング(サーフボードに腹ばいになり両手で水をかいて前進すること)を開始すればプライオリティを失ってしまいます。Aさんのプライオリティの権利はBさんに移り、Aさんのプライオリティの優先権は最下位となります。Bさんがテイクオフをすれば、次のプライオリティはCさんとなります。このようにプライオリティは平等に順番に回ってきます。ただしAさんの邪魔にならない範囲でBさんやCさんが波に乗ることは可能で、選手同士のプライオリティを活用した心理戦も見どころの一つです。
プライオリティを持っている選手の邪魔すると?
プライオリティを持っていない選手はプライオリティを持っている選手のライディングの邪魔をすると「インターフェアレンス(妨害)」としてペナルティが与えられます。ペナルティはシチュエーションによって様々ですが、スコアが半分になったり、プライオリティの順位が最下位になるなど、ヒートにおいてマイナスに働くこととなります。今誰がプライオリティを持っているのは、海上や岸に設置されたプライオリティボードに表示されるため、これにより選手や観客が現在のプライオリティ状況をリアルタイムで把握できます。
試合開始直後はプライオリティがない!?
各ヒートのスタート時点はどの選手もプライオリティを持っていません。全選手がスタートラインに並び、一斉に波を待つ状態から始まります。最初に波に乗る選手が決まるまで、プライオリティは設定されず、最初の波に乗る選手が決まると、その選手はプライオリティを消費し、次の波に乗る権利が他の選手に移ることとなります。
理解すればもっとパリオリンピックが面白くなる!
自然相手のオリンピック種目はサーフィンだけです。「同じ波は二度と来ない」と言われているように、波の高さ、うねり、水飛沫の量などが異なるため、プライオリティのルールはサーフィンにおいて非常に重要なものです。試合中は自分の得点や相手の得点、順位、残り時間など様々な項目を考えながら、「プライオリティを守る」ということも行います。選手同士の駆け引きや、ポジション取りを見るのもとても面白いサーフィン。プライオリティを理解してオリンピックの観戦を引き続き楽しみましょう!