NSA理事長が語る、サーフィンをもっと身近なスポーツへ!
2024年はオリンピックイヤー。2020東京オリンピックで初めて五輪種目となったサーフィンですが、メダルを2つ獲得したことは記憶に新しいですね。そんな日本のサーフィンを支えている団体の一つが「NSA(一般社団法人日本サーフィン連盟)」です。2011年から理事長を務めているのが、今回インタビューを依頼した酒井厚志理事長です。ご経歴、オリンピック、サーフィン業界を盛り上げるために取り組まれていることなど、なみある?メディア独自に幅広くお話をお伺いしました。
地元の先輩に連れられて遊びで始めたサーフィン
ーはじめに、酒井理事長のご経歴について教えていただけますでしょうか。
今は静岡県に住んでいるのですが、実は東京生まれ東京育ちです。高校まではバスケットボールをやっていて部活に一生懸命でした。高校生の頃にスケートボードを始めた頃からだんだんとサーフィンにも興味が出てきたと思います。地元の活発な先輩に無理やり海に連れられて、サーフィンデビューは鵠沼海岸でした。膝ぐらいの波で、その日のうちに立てたような記憶があるような、ないような。大学生の頃から静岡県下田市の民宿でアルバイトを始めたのですが、就職活動をせずそのままアルバイト先に転がり込んだ形で下田市に住み続けており、そこからサーフィンに関わる仕事を始め今に至ります。現在もサーフィンは週3〜4で続けていて、昨日は朝と夕方2回入りました(笑)
若かりし頃の酒井理事長、かっこいいですね〜!
ーそこからなぜNSAの理事長になられたのでしょうか?
元々は自分がサーフィンをしたかっただけなのですが、だんだんと後輩ができて下の世代の面倒を見るようになりました。そうなると選手を引率したりジャッジをしたりと大会の運営側に回ることも増えてきて、連盟の仕事を手伝うようになったというのがNSAに関わり始めた経緯です。趣味を仕事にすることはありがたいことにやりがいもあるし、純粋にすごく楽しいなと思っています。
「スポーツ」としてサーフィンをもっと発展させたい
ーそもそもNSAは何を目的としている団体なのですか?
日本のサーフィンを総括する組織として、サーフィンが健全なスポーツとして発展し、海外の連盟との友好も含めて、サーフィン業界全体を盛り上げて行こうという大きな目標があります。NSAの会員数は正会員で約1万人、オープン会員は2000人〜3000人います。
ーNSAの理念「We are Surf Fan」について酒井理事長のお考えをお聞かせください!
「サーフィンが好きな人が集まって、サーフィンが楽しめるよりよい環境を作っていこう」という大きい意味があります。オリンピックの正式種目となったことで、教育現場ではサーフィン部やサーフィン同好会が発足し、スポーツとして認められる動きも高まってきています。今まで「観光」のためと見られてきたサーフィンが、「スポーツ」として学校教育にも反映されている最中です。海という自然の中で行うスポーツはとっても貴重です。サーフィンを通して、海の生物のことや海洋プラスチックごみをはじめとする環境問題、潮の流れなど色々なことを知識として身につけることができます。海の近くに位置する小中学校にはぜひもっとサーフィンに取り組んでほしいと思っています。
ーNSAはどのような活動を行なっていますか?
NSA主催で年間4つの大きな大会を開催しております。それ以外で全国で30試合ほどの公認大会を行なっています。大会以外ですと、サーフィンスクールの開催、ビーチクリーン活動も精力的に行なっており、9月には「NSAサーファーズ・ビーチクリーンACT」という全国70の支部が一斉にビーチクリーン活動をするという行事を開催しています。多い時で1万人の方に参加をしてもらい、サーファーと密接に関わる海を綺麗にしようとする取り組みを行っています。ここオリンピックスクエア内にある本部はサーフィン以外に日本スポーツ協会や日本オリンピック委員会に加盟している50以上の団体が拠点を構えているため、やっぱり何でも情報が早いのが特徴ですね。競技の垣根を越えた横のつながりを持ちながら、日本のスポーツ界全体を盛り上げようという雰囲気があります。スポーツ団体理事長会というものもあり、多い時で週3回ほど下田から東京に来ることもあります。車では3〜4時間くらいかかるんですけどね。
緑の多い開放的なオリンピックスクエア内にある広場で取材をさせていただきました!
波の上で自然と体が動くレベルまで経験値を積む
ー現在のサーフィンのトレンドはありますか?
競技者としてサーフィンをしている人は全国でも2万人程だと思います。ただそれ以上に趣味としてサーフィンをしている人はライト層を含めると100万人はいると思います。サーフィンを競技としてではなく、健康や教育の一環で取り入れる人が増えているのではないかなと。サーフィンといってもボードの種類は様々で楽しみ方もそれぞれです。選択肢が増えたことで自分の好みに応じて選ぶことができるのでやり方が広がった気がします。私自身は欲張りなので、朝はショートボード、夕方はロングボードとどちらも楽しんじゃっています(笑)波の状況に合わせて、「今日はこの板を使おうかな?」と色々と自分で選んで楽しむことができるのはサーフィンならではですよね。
ー酒井理事長が感じる日本人選手の特徴はどんなところですか?
日本人選手はすごく器用だと思います。日本の波はどちらかというとビーチブレイク(海底が砂のサーフポイント)で、小さい波で楽しんでいる人が多い。海外の波は通常時でも頭を超えて2〜3mの環境で行っているため、大きい波が期待される開催地では日本人選手は勝ち進めないことが多いですね。逆にいうと、小さい波の環境だと普段から慣れているので器用に波に乗ることができるんです。最近は大きな波にも対応できるようにと、冬の間は海外で練習を行っている若い選手も増えてきました。
ーレベルの高い環境で活躍するためにはどのようなことが必要ですか?
まず第一に「経験値を上げること」だと思います。日本国内だけに留まらず、ハワイのノースショアやオースラリアなどに行って、海外のトップレベルの選手を観察したり、自分でも現地の波に乗ってみるとかとにかく行動することが大事です。サーフィンは全く同じ波はないので、乗った瞬間に「この後どうしよう」と考えていると遅いし、いい動きはできないんです。自然に体が動くようになることが大切で、それにはやっぱり経験が不可欠です。上手なサーファーと一緒に海に入るというのもいい練習になるし、上達するチャンスだと思います。
自身のサーフィン経験を基にお話になる姿が印象的でした!
パリオリンピックでもメダルを期待
ー東京オリンピックの反響はいかがでしたか?
東京オリンピックでは銀メダル・銅メダルと2つのメダルを獲得することができいい結果になりました。日本人選手にとっては、慣れた会場で競技をすることができ、少し特殊なオンショアで大きな波でしたが現地の有識者からの的確なアドバイスもあってメダルが取れたのだと思います。学校に通う選手は公休願いを提出して学校を休んで大会に出場することもありますが、オリンピック後は、公休扱いを認められやすくなったりと、サーフィンという一つのスポーツ種目に対する世間一般の方々からの見方が少しずついい方向に変わったきっかけになったと思います。
ー今年のパリオリンピックで期待していることは?
やはりメダルは獲れたらと期待をしています。ただチョープーの波はトラックが通れるくらいの大きさが特徴なので滑れる選手は限られる難しい波です。選手達は大会に出る数を削ってでも、チョープー現地で少しでも多くの波に挑むため合宿を重ねており、オリンピックに照準を合わせて練習に取り組んでいるので期待したいところです。
オリンピックシンボル「五輪」の大きなモニュメントが!
サーフィンをもっと身近なスポーツへと押し上げたい
ー今後、NSAとしてどういった活動に取り組んでいきたいですか?
そうですね。全国各地でサーフィンによりカジュアルに触れてもらうために、「サーフィン体験」を増やしています。東京都内の小学校でもプールにサーフボードを浮かべて、サーフィン教室よりもより手軽にできるものです。サーフィンというとスポーツではなくファッションとかカルチャーというイメージが強かったんですが、オリンピックを機にだんだんとスポーツとして認識してもらえるようになってきているので、もっと広く子供たちにもサーフィンをしてもらえるような機会を提供したいです。その中から一人でもオリンピックを目指すような選手が現れればとても嬉しいしすごいことだなとワクワクします。
ー最後になりますが、NSAの展望についてお聞かせください!
NSAは日本を代表するサーフィンを総括する団体として各所から認められており、それに伴い責任も重くなっています。今までは自分たちが楽しむためにサーフィンをしていたところがあったんですが、サーフィンというスポーツを広めて魅力を届けるという責任感のもと、一般社団法人から公益社団法人への移行手続きを行なっています。日本は海洋国家と言われている世界的にも珍しい国です。太平洋側はもちろん、日本海側でも北海道でも沖縄でもサーフィンができる。もっとサーフィンを楽しむ人が増えてもいいと思うし、それこそ日本の国技にしたっていいくらいのポテンシャルはあると思います。サーフィンの輪を広げていけるようにこれからも頑張っていきたいです。
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