サーフィンで自由に表現する自分らしさースタイル系サーファー真田和斗さん
今回お話をお伺いしたのは、湘南出身でスタイル系プロサーファーの真田和斗さん。型にハマらない野生的でダイナミックなサーフィンが特徴。「サーフィンはアート。自由奔放な自分を表現できる人生の全てなんです。」と語る真田さんはもともとサーフィンに対してそこまで熱意があったわけではありませんでした。サーフィンを真剣に取り組むきっかけとなったオーストラリアでの体験や、シェイパーになりたいという今後の人生目標についてお伺いしました。
オーストラリアでの出来事が転機に。
ーサーフィンを始めたのはいつ頃でしたか?
サーファーの両親の影響で、小学校2年生の時に地元の片瀬の海に連れて行かれたのがきっかけです。幼い頃から海は身近な存在で、小学校4年生になると一人で自転車で海に行くようになりました。周りに勧められて大会に出場し始めた途端、強制されているような感覚になり、サーフィンを純粋に楽しめなくなってしまいました。もともと気合を入れて練習するタイプではなかったので、中学2年生から高校2年生までは一度サーフィンから離れ、それ以降も趣味として楽しむ程度だったんです。
ーそこからプロになろうと決意したきっかけは?
サーフィンと真剣に向き合うきっかけとなったのは、サーフショップを営んでいた師匠から「やることがないならワーホリに行ってこい」と言われたことです。最初は興味がなかったので断っていたのですが、「まずは付き添いでもいいから」とオーストラリアへサーフトリップに連れて行ってもらいました。そこでの経験が自分にとってのターニングポイントとなりました。自然に包まれる感覚を初めて味わい、「サーフィンというスポーツの素晴らしさ」に心を打たれました。それまで「やらされている」感じが強かったサーフィンの印象が180度変わったんです。
ー自然に包まれているとは具体的にどういうことでしょうか?
オーストラリアのヌーサという街に滞在していました。美しいビーチと手付かずの大自然が残るリゾート地で、海はとにかく綺麗でイルカやカメも泳いでいます。国立公園を抜けた先に広がる割れた波の景色はもう本当に衝撃的で、一生忘れられないと思います。そこから2年間、ワーホリでオーストラリアに滞在し、「サーフィンするために生きる」と言えるほど、徹底的にサーフィンに向き合いました。
サーフィンは自分を表現できるもの。
ーロングボードのプロになったのはなぜですか?
湘南は波が小さく、力がないので、細かく繋ぐようなサーフィンになりがちです。それが雑に見えてしまうのが嫌で、落ち着いて楽しめるロングボードに切り替えました。約3年間プロとして試合に出ていましたが、現在はスタイルを評価される海外の試合にのみ出場し、自由に楽しくやっています。
ースタイル系のサーファーになろうと思った理由は?
僕のサーフィンの特徴は「予測不能な動き」なのですが、観客を驚かせるようなパフォーマンスで注目を集めたいんです。プロの試合では、得点を狙うために皆の動きが似てきて、勝つためのセオリーがどうしても決まってしまいます。自分はそういう試合運びが苦手で、やりたいサーフィンを我慢するのが好きじゃないと気づきました。技量やレベルが高くなくても、自分なりにどう表現できるか考えた結果、今のスタイル系に辿り着きました。一生に一度しかない波をどう楽しむか、その場の感情に身を任せて、僕らしさを見せていきたいです。こんな自分のサーフィンを面白いと思って見てくれる人がいるのは、とても幸せですね。
ーカリフォルニアで開催された大会に出場してみた感想は?
9月のマリブクラシックノーズマスターに出場したのが、自分にとって初めての海外試合でした。普段は緊張しないのですが、会場の雰囲気に圧倒され、足が震えるほど緊張しました。カリフォルニアでは、一般のサーファーもスイッチ・スタンスが当たり前で、すごく衝撃的でした。この環境でサーフィンができたことは勉強になりましたし、オーストラリアとは異なるサーフィン文化を感じられた良い経験でしたね。
ー憧れているサーファーは?
アレックス・ノスト、アンディ・ニーブラス、ジャレッド・メルの3人です。サーフィンはアートの一種で、「一本の波にどんな線を描けるか」が大切だと思っています。彼らの表現の仕方がすごく、あんな風にサーフィンできるともっと楽しくなるんだろうなと。サーフィンは自己表現の一つだと思わせてくれるサーファーだと思います。
夢はシェイパーになること。
ーロングヘアーは昔からですか?
はい、昔からです。短髪だと定期的に美容院に行く必要があるので、伸ばす方が自分的には楽なんです。ロングヘアでパーマだと、初対面でも覚えてもらいやすく、海外でも得をすることが多いですね。最近のあだ名は「おばさんおじさん」(笑)。「おばさんのように見えるけど中身はおっさんだね」とよく言われます。自分でも何を考えているのか分からないほど自由奔放な性格なので、突然坊主になることもあるかもしれません(笑)。
ー今はどのような仕事をしているのですか?
今は海外に行くための資金を貯めています。現場仕事やサーフボードのリペアの仕事、夜勤などを掛け持ちしていて、仕事をしすぎてサーフィンできない日も多いです。湘南の小波では練習にならないことも多いので、海外に1ヶ月ほど滞在するための資金を貯めて、向こうで集中的に上達した方が効率がいいかなと。そのためにも今は我慢の日々です。
ー真田さんのこれからの目標は?
人生目標の一つがシェイパーになること。今はサーフボード工場で勉強中です。師匠がシェイパーで、小さい時からお世話になっていたので、僕も次世代にボードをプレゼントできるような存在となりたいですね。そのためにも海外に出て様々な人のサーフィンを見たり、試合に出て自分を評価してもらったりと、コネクション作りに全力で取り組んでいます。シェイパーになるには、自分が楽しく乗らないと話にならないし、楽しそうに乗っている姿が一番のアピールだと思っています。
ー最後に読者にメッセージをお願いします!
笑顔で溢れている海が最高なので、自信を持ってサーフィンを楽しんでほしいです。海は誰のものでもないので、ビジターや観光客にピリピリすると、せっかく楽しいはずの海が台無しになります。怒鳴ったりするのは日本独特の文化で、海外に行くともっとフランクに平和にサーフィンを楽しむ雰囲気だなと感じます。僕も昔は波を独り占めしたいとガツガツしていましたが、海外で考え方が変わりました。皆さんもそれぞれの中で楽しんでサーフィンを楽しんでもらえたらと思います!