サーフィン日本代表・稲葉玲王さんが振り返るパリ五輪と次世代に伝えていきたいこと。
今回お話をお伺いしたのは、プロサーファーでパリオリンピックサーフィン日本代表の稲葉玲王さん。日本代表選手としては唯一の日本生まれ日本育ちながらも最高位の5位を収めたことは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。そんな「サーフィン界のスター」稲葉さんにパリオリンピックの感想や、これまでの決して平坦ではない道のりや苦悩、今後の夢についてお伺いしました!
メダルはすぐそこまで見えていただけにすごく悔しい。
ーパリオリンピックを振り返って、いかがですか?
オリンピック前は「ここで引退してもいい」と強い気持ちで挑みましたが、実際に戦ってみて、「もう一度あのレベルで戦いたい」という思いが湧いています。本当は燃え尽きたかったのですが、新たな課題も見つかり、自分的にはまだまだやれると感じています。日本人最高位の5位という成績で、メダルにあと一歩まで迫っただけに、悔しさもあります。今後は試合を回りながら競技人生について考えつつ、4年後のロサンゼルスオリンピックも視野に入れていきたいと思います。
ーオリンピック終えて、現在はどのように過ごされていますか?
ありがたいことに忙しい日々を過ごしており、休日はほとんどありません。国内外の試合に複数出場し、イベントや取材の依頼も増えたため、オリンピックの余韻に浸る暇もないです。帰国後、他のオリンピック選手と共にテレビ出演や取材を受ける中で、ようやくオリンピックに出た実感が湧いてきました。
ー日々お忙しい中でのリフレッシュ方法は?
何も予定がない日は家から出ないほど引きこもりがちです(笑)。うさぎを飼っているので、一緒に過ごす時間が癒しになっています。結婚しても生活スタイルはあまり変わりませんね。
ー高いモチベーションを維持できる理由は?
自分の目指している目標や夢を明確に描けていることが大きいです。しっかりとビジョンを持っていれば、どんな壁があっても乗り越えられると思っています。また、ここまでたどり着けたのは多くの方々の支えがあってこそです。応援してくれる人たちに結果で恩返しをしたいという気持ちが、自分の原動力になっています。周囲のサポートに感謝し、その期待に応えることが、常に自分を前進させてくれるのだと思います。
海外で痛感した格差をバネに。
ーこれまでどのような苦労がありましたか?
日本で生まれ育ったので、環境面でのハンディキャップを感じてきました。世界トップ選手が当たり前に近くにいる国とは異なり、日本は波のコンディション的にも物足りなく、世界で通用する選手が育ちにくいという現状があります。海外の試合を回るときは言葉の壁もあり、試合の準備も満足にできないことがありました。海外選手の多くがスポンサーチームと帯同し、整った環境で競技に集中できる中、自分はたった一人で海外に行っているので、待遇の差を痛感しつつ、そういった中で勝ち上がることはすごく難しかったです。ただその経験こそが自分を強くしてくれ、海外の選手に負けたくないという強い思いが生まれたのだと思います。
ーそうした経験の中で気づいたことは?
自分のコンフォートゾーンから積極的に抜け出すことの大切さを痛感しました。新しい環境に飛び込むことで、見える世界が広がり、自分の成長にもつながります。例えばブラジルに行けばブラジル人とコミュニケーションをとってみたり、外国人のチームに入れてほしいと自分から直接頼みに行ったりもしました。不安もありましたが、外国のトップ選手と一緒にいると、自分も良い刺激を受けて、いい方向に引っ張られている感覚がありました。若いうちに飛び込むと、基本みんな受け入れてくれて、歓迎してくれます。深く考えすぎずにどんどん飛び込んで、自分を変えるきっかけを掴むことが大切です。最近はオーストラリアやハワイ、カリフォルニアに行くキッズも増えてきましたが、日本にいる時と同じメンバーで行っても何も変わらないです。居心地のいいメンバーから、一歩外に踏み出す勇気を持ってほしいですね。
ー次世代のキッズに伝えていきたいことは?
「夢や目標をしっかり持ち、ぶれずに挑戦し続けること」が大切だと伝えたいです。これはサーフィンに限らず、人生において大切なことだと思います。自分の信念を持って進むことで、困難に直面しても立ち向かえる強さが身につきます。また、自分がオリンピックで得た経験を、次世代に伝えていくことで、彼らが夢を持って成長していけるようにサポートしたいと思っています。
サーフィンの価値を高めてキッズに夢を届けたい。
ー今後の人生目標は?
自分が次世代の日本人キッズにとって「夢の象徴」であり続けたいなと思っています。サーフィンはまだメジャースポーツではなく、サーフィン一本で生活するのは簡単ではありません。オリンピック種目に選ばれたことで少しずつ状況が変わりつつある今、自分がその先駆者として、サーフィンに夢がある世界を作りたいと思っています。サーフィンを通じて、多くの人に希望や夢を与えられる存在になりたいです。
ー稲葉さんにとってサーフィンとは?
サーフィンはカルチャーだと思います。今となってはスポーツとしての面も強いと思うのですが、やはりサーファーはサーファーという自由な人種だと感じることも多いですし、自分はサーフィンのそういう「らしさ」が好きで続けています。競技をやっているとみんな目の前の試合に集中してしまいがちですが、サーフィンの本質は自分の好きな波を見つけたり、いい波を求めて旅をしたりと、楽しむものだと思うので、現役選手であってもそれはずっと忘れないようにしたいです。
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