【サーファー向け】台風スウェルで最高の波に乗るためには?気象予報士が解説。
今回お話をお伺いしたのは、なみある?の気象予報士の塩田久実さん。海が大好きで海とのつながりを持ちたいという強い思いから気象予報士資格を取得。なみある?ユーザーに気象概況を「伝える」仕事に携わっています。気象概況を書くときに大切にしていることをお伺いしたほか、サーファーなら知っておきたい台風による波のうねりについて解説いただきました!
海にまつわる仕事がしたかった。
私が気象予報士を目指したきっかけは、20代の頃、友人に初めて連れて行ってもらってはじめた「サーフィン」でした。そこから海に魅了され、ボディーボードを楽しむようになり、今でも週に何回かは海に入る日々です。サーファーたちのように自信を持って波と向き合いたい、海とともに生きていきたいという思いがどんどん強くなり、気象予報士の試験に挑戦することを決意したことが全ての始まりです。
もともと人と競い合うことより、自分自身と戦うことの方が好きな性格です。合格率4%台の難関と言われる気象予報士の資格でも、自分がその4%の中に入ればいいだけで、自分との戦いだと思うと、「やれるかも」と感じました。当時はMCの仕事を続けながら、通勤中や休憩時間など隙間時間を使って猛勉強しました。手を酷使しすぎて、腕や肩が痛くなることもありましたが、その努力が実り、5回目の挑戦でついに合格しました。2016年からは「なみある?」の気象予報士として概況を書かせていただいています。
内陸に住んでいるサーファーに寄り添いたい。
海の近くに住んでいる人は、風や波をある程度読むことができる人が多いかもしれませんが、内陸に住むサーファーは貴重な時間とお金を使って海に行くことが多いです。なみある?のユーザーの中にも、そうした方が多く、私自身も千葉県の内陸に住んでいた頃、2時間かけて海に行っても波がなく、がっかりした経験があります。そうした方々のために、「手を抜かない」ことを心がけています。提出期限ギリギリまで悩むことも多く、遠方から海に来る人々に失礼がないよう、心を込めて予報を書いています。もちろん天気は「生き物」であり、刻一刻と変化します。データが外れることもありますが、できるだけ正確な情報を発信するよう心がけています。時間があるときには、サーフトリップも兼ねて各ポイントの特徴を把握するよう努め、自宅近くのポイントには仕事がない日でも寄り、リアルタイムの情報を集めるようにしています。
Facebookを通じてユーザーからメッセージをいただくこともあります。「いつも予報を参考にしています、ありがとうございます」と言われると、やりがいを感じます。ユーザーからの反応を直接いただける機会は少ないですが、読んでくださっている方がいるのだと実感し、サーフィンのお役に立てていると嬉しく思います。
気象予報士が台風について徹底解説!
エルニーニョ現象が春頃まで続いた影響で、今年の夏は例年に比べて台風の発生が少ない年でした。しかし、秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性があり、太平洋西部の海水温が上昇することで、熱帯低気圧や台風の数が増えると予測されています。サーファーにとっては、台風によるビッグウェーブの発生状況が気になる方も多いと思いますので、台風について解説します!
台風の発生と成長
台風は、海面水温が26~27℃以上の海域で発生し、28℃以上の温かい海で成長していきます。熱帯の北緯5度から15度付近では、上昇気流により積乱雲(入道雲)が集まり、渦を形成します。この渦が次第に熱帯低気圧となり、海面水温が高い海域を通過することでさらに発達し、中心の風速が17m/sを超えると台風へと成長します。
成長期には、28℃以上の温かい海から供給される水蒸気をエネルギーにし、中心の気圧が下がり続けることで強風が生じ、台風はその勢力をさらに強めます。しかし、台風が勢力を保つのは海面水温の高い海域までで、冷たい海域に到達すると衰退し始め、温帯低気圧へと変わります。
台風による波の形成
台風が進むと、強い風によって波が生まれます。風が吹き続ける距離や時間が長いほど、波のエネルギーは強まり、より大きな波が形成されます。台風が強いほど、その周辺の海域は大荒れとなり、発生した波は周辺の広範囲に広がっていきます。
サーフィンに最適な波、特に「台風スウェル」と呼ばれるものは、台風の進路や勢力によって異なります。たとえば、台風がフィリピン東海上に発生し、北へ向かって進むと、南東~南のうねりが日本の沿岸部に到達します。このうねりは波長が長く、パワフルな波を形成します。
特に、北緯20度線付近に台風があるとき、日本の太平洋岸には大きな波が届くことが期待されます。湘南や東海エリアでは、南からのうねりがサイズアップし、西日本からは波が強くなり始めます。日本の南の海上に台風が停滞したり、ゆっくりと進んだりする場合は、グランドスウェル(波長の長い波)も期待できます。
台風スウェルを捉えるポイント
台風スウェルが届くかどうかは、台風の進路だけでなく、勢力や速度も重要な要素です。たとえば、2023年の台風2号などは、北緯17~18度付近の高い海面水温(30℃近い)でゆっくりと西へ進みました。これにより、湘南から西のエリアには南西のうねりが長い期間続き、サーファーたちはパワフルな波を楽しむことができました。
逆に、台風が北緯20度を超えた後、勢力が弱まってしまうと、予想していたほどの波が立たないこともあります。このため、天気図や波の予報を確認しながら、台風の進路をしっかりとチェックすることが必要です。
北日本の太平洋側や日本海側でも、台風の影響で波が発生することがあります。台風が東の海上を北上すると、温帯低気圧に変わり、南東~北東のうねりが東北や北海道のポイントに到達します。また、日本海側では台風の北風が波を生み出し、北西からのうねりが届くこともあります。
台風スウェルを楽しむための準備
台風スウェルは最高な波をもたらす一方で、非常にパワフルで危険な場合もあります。特に、波の周期が長い場合は、強い波が一気に押し寄せてくることが多いため、初心者の方は要注意です。また、台風が接近することで強い風が吹き、波のコンディションが崩れることもあるので、オンショアやオフショアの風の影響も考慮して波を選びましょう。
サーフィンはすごく楽しいスポーツですが、天気の急変により、波が急に上がることもあり、危険を伴うスポーツです。初心者の方は一人で判断せずに、ベテランの方のアドバイスを参考に、技量に合わせて無理のないチャレンジをするようにしてください。なみある?の情報と天気図を照らし合わせることでだんだんと自分でも読めるようになっていきます。そうするとより安全にサーフィンが楽しめると思いますので、ぜひ今後ともなみある?をチェックしていただけると幸いです!